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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Read 青べか物語 (あおべかものがたり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 160,888 characters · 317 screens
亭主が元あにい分だとすれば、伴れ添うあさ子もずぶの素人ではない。尤も彼女はごったくやで稼いでいたのだから、ずぶの素人でないことは慥かであるが、ここではもう一つの意味。つまり博奕打の女房という鉄火な自意識をさすのであり、そのためには、亭主の負けがこんでくると、片膝立ちになって赤いものをちらちらさせるという、特技を演ずることも辞さなかった。
この特技は人によるそうである。若くて、小股の切れあがった美人で、それが片膝立ちに構えると、下の肌着と肉躰の一部がちらちらし、そのため博奕を打つ手許が狂うというのであるが、あさ子の場合は成功しなかったばかりか、「気分を害しちゃう」という非難さえ起こった。それは彼女が若くもなく、小股の切れあがった美人でもないからではなく、なすびがさがっているから、という理由であった。筆者はそれがどういう意味であるか、いまでもとんと理解できないのであるが、片膝立ちになって赤いものがちらちらするとき、同時に、さがっているなすびが見え隠れしたのでは、――なすびがいかなる物であるか不明にしても、なんとなく「気分を害する」という気持がわかるように思えるではないか。