Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Read 青べか物語 (あおべかものがたり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 160,888 characters · 317 screens
「ええびだよ」と繁あねは答えた、「ただええびに来ただよ」
私はまた訊いた。
「おんだらいつも一人だってこと知ってんべがね」
「妹はどうしたんだ」
「あまか」と少女は鼻に皺をよせた、「墓ん場に寝かしてあんよ」
「鼬にかじられるぞ」
「つまんねえ」
お繁は肩をすくめ、それからそこへしゃがんだ。すると垢じみた継ぎだらけの裾が割れて、白い内股が臀のほうまであらわに見え、私はうろたえて眼をそらした。私は信じがたいほど美しいものを見たのだ。
繁あねは町じゅうでもっとも汚ない少女だといわれていた。乞食あま。親なしで家なし。墓場に供えられる飯や団子を食う餓鬼、それがお繁であった。躯はできものだらけで、胸のところは腫物の膿のため、着物がはりついて取れなくなっている。いつもどこかの海苔漉き小屋か、納屋か、ひび置き場に寝る。風呂へはいることはないし、顔も洗わない。蝨だらけ蚤だらけである。もちろん親類もなく遊ぶ者もいない、というのがお繁であった。
それは決して誇張ではなかった。私もかなりまえからお繁を知っていたし、道で会えばたいてい呼びかけたものである。彼女はいつも垢だらけで、近くへ寄るとひどく臭かった。