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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Read 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,593 characters · 325 screens
戸外では霜の色が薄れて行き、……そんな母親の姿に豹一は幼心にもふと憐みを感じたが、お君は子供の年に似合わぬ同情や感傷など与り知らぬ母だった。
「お君さんは運が悪うおますな」と、長屋の者が慰めに掛っても、
「仕方おまへん」と、笑って見せた。軽部の死、金助の死と相つづく不幸もどこ吹いた風かといった顔だったから、愚痴の一つも聞いてやり、貰い泣きもさして貰いまひょと期待した長屋の女たちは、何か物足らなかった。
大阪の路地にはたいてい石地蔵が祀られていて、毎年八月の末に地蔵盆の年中行事が行われたが、お君の住んでいる地蔵路地は名前からして、他所の行事に負けられなかった。戸毎に絵行燈をかかげ、狭苦しい路地の中で、近所の男や女が、
――トテテラチンチン、トテテラチン、チンテンホイトコ、イトハトコ、ヨヨイトサッサ、……と踊った。お君は無理して西瓜二十個寄進し、薦められて踊りの仲間にはいった。お君が踊りに加わったため、夜二時までとの警察のお達しが明け方まで忘れられた。
相変らず、銭湯で水を浴びた。肌は娘の頃の艶を増していた。ぬか袋を使うのかと訊かれた。水を浴びてすくっと立っている、眼の覚めるような鮮かな肢態に固唾をのむような嫉妬を感じていた長屋の女が、あるときお君の頸筋を見て、