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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Read 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,593 characters · 325 screens
ことに多鶴子のような若い女が人前で食べるのは気障だというのである。
学校時代ある夜おそく豹一は友人の赤井と野崎と連立って、京極裏のスター食堂へ行った。寒中のことで、ことに京都は底冷えがひどく、彼等はストーブの傍に椅子を寄せて陣取った。なにを食べようということになると、食べることにかけては全く意地汚い野崎が、いっぺんアイスクリームを食べてみたいな、去年の夏から食べたことあらへんから、と言い出した。すると、赤井がすかさず、うん、おれもそれ食べたいと、思ってたんだと、応じた。毛利、君はときかれたので、豹一は異を樹てるというより、極く普通のことだが、珈琲を注文し、そして、彼等が肩のあたりをぶるぶるふるわせながら、アイスクリームを噛じるようにのみこんでいるのを、にやにや笑って見ていた。すると、赤井は、寒中のアイスクリームの味を知らんとは、お前田舎者だぞと歯を鳴らしながらいった。
そのことを豹一は想い出していたのだ。しかし、その時田舎者だといわれたが、豹一はそんなに腹が立たなかった。なぜなら、赤井や野崎のそんな気障っぽさはまるで腹の中ではしゃぎまわっているような、気障っぽさであったから……いうならば、多鶴子のそれのようにつんと乙にすまし込んだ気障っぽさではなかったからである。