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「せいびしょう」について
「青眉抄」について
宮本 百合子
Read 「青眉抄」について (「せいびしょう」について) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,169 characters · 5 screens
丁度、仕入れして来たばかりの主人が、しきりに、いろんな本を帳場に坐っている粋なおかみさんにしまわせている。
「こんなのもいい本だが、何しろこう少なくちゃ仕様がない」
主人は、本やというよりもむしろ呉服屋の年功経た番頭というような云いかたで、新刊本の棚の前に、一冊の本を半分投げてよこした。十八年度最終の出版整備が公表されて程なくのことである。
今日の本やの気分というものを犇と感じつつ見ると「青眉抄」上村松園とある。
「おや、珍しい本だこと」
「さすがに装幀もようござんすね」
そう云ったきり一冊しか出さないのである。
純綿ものでも出されたような工合で、その一冊を買った。
日本画家の芸術家としての内部生活の限界とでもいうようなものにふれて、様々の読後感に打たれた。
一かどの芸術家は、男女によらずだれしも或る強情さ、一途さ、意志のつよさ、人生への負けじ魂をもっている。それは人間的な素地として、其々の専門部門への特別な天稟とともに備えている。其々の時代の制約と闘うということも共通である。苦心するのも共通である。
「ロダンの言葉」という二巻の本がある。これが、ロダンの芸術を益々ふかく理解させるばかりか、後進のものに彫刻のみならず、芸術というものの本質をわからせるに役立ち、文学や音楽の仕事にたずさわるものをも魅する珠玉に輝いて