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あおひげにひゃくはちじゅうさんにんのつま
青髯二百八十三人の妻
久生 十蘭
Read 青髯二百八十三人の妻 (あおひげにひゃくはちじゅうさんにんのつま) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,736 characters · 28 screens
(アンドリュが逮捕されると、モルガンティは伊太利へ逃げた)
手続きに不充分なところがあったのだとみえて、アンドレェはひどく苦しんだだけで助かった。
一と月ほど後、映画会社に投資するという口実で、三十万フランでサン・ドニの家を売らせ、偽造の株券を見せて安心させたうえで、マダム・クゥシェとアンドレェをヴェルヌイユの「ロッジ」へ連れこみ、翌十五年のはじめまでいっしょに暮らしていた。
一月の中頃、ランドリュが南米で亡夫の遺産を受取ってきたラボルト・リネェという若い未亡人とリヴォリの通りを二人で歩いているところを、アンドレェに見られた。帰るなり、たやすからぬ悶着がおき、投資した金のことにまで発展し、明日中に株券を売払って、息子と二人でべつな家に住むといいだした。
ランドリュは二人をあの世へ送りこむことにきめ、納屋をつくるのだといって、ヌイイの家から耐火煉瓦や砂を運んできた。
一月十六日の夜、二人に亜砒酸を飲ませて殺した。台所の石床に厚く砂を敷き、その上に耐火煉瓦を積んで火爐をつくり、煙突を立てて、その煙突を料理用のストーヴの煙突に接続させた。クゥシェ母子の死体はアセチレン酸素のトーチ・ランプの強い炎で焼かれ、翌日の午前三時には、ショヴェルで三掬いほどの軽い灰になっていた。