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おんがくのみんぞくせいとふうし
音楽の民族性と諷刺
宮本 百合子
Read 音楽の民族性と諷刺 (おんがくのみんぞくせいとふうし) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,445 characters · 7 screens
の世界の違いかた、同時にそこにある共通性であった。
ゴーゴリの作品の価値は世界古典のうちに一つの峰として聳え立っている。彼の涙と苦しい笑いとひそめられた憤の震える調子は、アメリカの諷刺作家であったマーク・トゥウエンの作品などと全く異った悲傷な諷刺をつくり出している。マーク・トゥウエンの諷刺は、その基調に何と云っても辛酸をなめつくした後に、新興のアメリカ社会で世俗の生活で安定をかち得たその作者らしい妥協、気やすめがある。ゴーゴリの作品にはそれがない。悲哀の底が抜けている。作者としてのゴーゴリは、わが心のよりすがるべき小さい気休めの小枝にもどんづまりまで皮肉と諷刺との鎌を当てていて、彼の涙と笑いの果いは、一種の虚無感が連っているようでさえある。
イリフ、ペトロフの「黄金の仔牛」の世界は、そういう意味では、ゴーゴリの世界と全くちがう。訳者は「黄金の仔牛」の世界のユーモアを「上からの笑い」だと表現している。「上からの笑い」の真意は、勝利者が上から敗北者にあびせかけた笑いであるというよりは、現実社会の腐敗や停滞、偽瞞を裏まで見とおしている社会生活への鋭い洞察者が、その明るくてかげのない実践的な生活態度と遠大な見とおしに立って、周囲の虚偽卑劣を描きつつ、おのずから笑殺することで、社会的批判を表現しているのだと考えられる