Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,435 characters · 27 screens
顎をひいて片身寄りになってツイと出て来て、駕籠の棒鼻を押す。
「待て、どこへ行く」
「それはこっちの訊くことだ」
えッ、と突きだした当身の拳。まっこうに鳩尾のあたりをやられて、
「うむッ」
と、のけぞる。
とど助は、妙な顔をして阿古長のほうへ振りかえって、
「ねえ、阿古長さん、どこかで聞いたような声でごわすな」
「ええ、わたしも今そう思っていたんで」
とど助はあわてて引きおこして見ると、これがひょろ松。口をアアンとあいて、つまらない顔をして気絶している。とど助は頸へ手をやって、
「これはどうもいかんことになった。阿古長さん、これはひょろ松どんでごわす」
江戸一の捕物の名人、仙波阿古十郎が北番所で帳面繰りをしているとき、阿古十郎が追いまわしていた神田の御用聞、ひょろりの松五郎。阿古十郎のおしこみでメキメキと腕をあげ、神田のひょろ松といえば、今では押しも押されもしないいい顔なんだが、こうなってはまるで形なし。
阿古長も、おどろいて寄って来て、
「なるほど、これはひょろ松。妙な面をして寝ていますね。しかし、こうしてもおけませんから、生きかえらしてやりましょう」
馴れたもので、引きおこしておいて背骨の中ほどのところをヒョイと拳でおすと、そのとたん、ひょろ松は、ふッと息を吹きかえして、