Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,527 characters · 23 screens

Aozora Bunko

顎十郎は藤波のそばへ行って、のそっとその前に立ちはだかると、

「これは、これは、藤波さん、暑中にもかかわらず御爽快のていでまず以て祝着。……お、これは、せんぶりどのも」

と、例によってわけの判らぬことを言っておいて、きょろりとした顔つきで、

「して、わたくしに御用とおっしゃるのは」

藤波は蒼白んだ顔をふりあげながら立上って、

「ここでは、話もなるまい。その辺を歩きながらでも……」

「おお、そうですか。どっちへ歩きます」

藤波と千太は先に立って、氷川神社の裏道のほうへ入って行く。顎十郎はすこし遅れて、のそのそとそのあとをついてゆく。

片側は土手、片側は鉾杉の小暗い林で、鳥の声もかすかである。御手洗の水の噴きあげる音が、ここまでかすかにひびいてくる。

藤波は立ちどまって、くるりと向きなおると、切長な三白眼でチラチラと顎十郎の顔を眺めながら、

「ほかでもないのだが、すこし御忠言したいことがあって、それで、ご足労を願ったのだが……」

顎十郎は、掌で顎の先を撫でながら、ぼんやりした声で、

「ほほう、それは、それは」

と、一向に張合がない。藤波はキュッと頬をひきしめて、