Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,819 characters · 26 screens
「大きに、そんなところだろう」
行きかかると、また、呟くような声で、
「もし、駕籠屋さん……駕籠屋さん……」
アコ長は、ゾクッとしたようすで、
「こいつアいけねえ。いやな声で呼ぶじゃありませんか」
「うむ、あまり面白からん声じゃ。ああいうのは、わしも好かん」
「しかし、呼ばれた以上は返事をしないわけにもゆきますまい」
そう言って、声のするほうへ向って、
「駕籠はここですが、あなたは、いったいどこにいらっしゃるンです」
沈んだ声で、
「ここです、ここです」
「ここです、じゃわからない。駕籠をめすんなら、こっちへ出て来てください」
「はい。……では、いまそちらへまいります」
土手ぎわに大きな欅の樹が一本あって、その下闇からヒョロリと出て来たのは、年のころ三十四五の痩せた小柄な男。下顎が出っぱって頬がこけ、眼ばかりいやにキョロリとした、妙な面。
老舗の小旦那といった風体で、結城紬の藍微塵に琉球の下着、羽織は西川という堅気で渋い着つけ。
提灯の灯影をさけるようにしながら、
「駕籠屋さん、これは戻り駕籠ですか、行き駕籠ですか」
アコ長は、へい、と額でうけて、
「行きも戻りもありやしません。