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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,327 characters · 43 screens
のひとつで、凧糸の釣にむずかしい呼吸のあるもの、また、これをあげるにも相当の技があって、八歳や十歳の子供などにあつかえるようなしろものじゃない。……なにしろ、行灯仕立てにして、その中に火のついた蝋燭が一本立っている……火を消さぬように、行灯を焼かぬように、これを高くあげるにはなかなかコツがいる。あげるまでのあいだに、十中の九までは行灯を燃やしてしまうのが普通です」
藤波は、腕を組んで、眼を伏せて考え沈んでいたが、フイと顔をあげると、
「いちおう理屈は通るようだが、それだと言って、立馬に罪がないとは言いきれない。長崎ふうのけん凧をつくって子供にあたえるくらいなら、そうとう凧に心得のあるやつ。行灯凧だってあげるだろう。……夜のうちに、自分で行灯凧をあげ、朝になって、御用金が金座を出る間ぎわに、間もなくこれから出るぞという合図に、こんどは、せがれに白地に赤二本引きの凧をあげさせた……」
顎十郎は、首をふって、
「どうもいけませんな。凧をつくる男なら、金座にもうひとり名人がいる。……それは、やはりお金蔵方のひとりで、石井宇蔵という男です。そいつが金座の子供の烏凧をぜんぶ作ってやっている。