Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,707 characters · 20 screens

Aozora Bunko

顎十郎の声をききつけるより早く、ひょろ松は奥から泳ぎだし、喰ってかかるような調子で、

「阿古十郎さん、ひどく気をもませるじゃありませんか。……いったい、今日までどこに雲がくれしていたんです」

顎十郎は、懐手をしてのっそりと突っ立ったまま、

「じつは、長崎のほうに友達ができてな、ちょっとそこまで行って来た」

ひょろ松は、ムッとして、

「冗談なんぞをいってる場合じゃありません。……こっちは、たいへんなことになってるんです。しっかりしてもらわなくっちゃ困ります。……それで、なにか見当がつきましたか」

顎十郎はケロリとして、

「引きうけたおぼえはないが、見当だけはつけてやった」

ひょろ松が、相好をくずしてあわて出すのを、顎十郎は手でおさえ、

「それで、南じゃ、このごろ、どんなことをやっている」

ひょろ松は、藤波とせんぶりの千太が、弥太堀に人数を張りこまして大わらわになっていることを話すと、顎十郎は、ふんと、鼻を鳴らして、

「こりゃア、ちと物騒なことになってきた。まごまごするとお蔵に火がつく。……南でやろうが、北でやろうが、おれにしちゃ、どうでもいいようなもんだが、なることなら、やはり叔父貴に手柄をさせてやりたい。