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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Read 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) by Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 119,879 characters · 242 screens
も暮せる男ではない。按吉から返事がくると、ホッとして、
「オイ、部屋がないってさ。じゃア、仕方がねえや。ともかく、ここにア居たくないから、小田原へ行こうよ。これから新規まき直しだ」
「私は小田原はイヤよ。お母さんと一緒じゃ居られないわ」
「だって仕方がねえもの。原稿が書けなかったから外に当もねえから、ともかく小田原で創作三昧没頭して、傑作を書くんだ」
「どうして荷物を運ぶのよ」
「たのめば、ここで預ってくれるだろう」
「家賃は払ったの」
「原稿も書けなかったし、前借りがあるから、もう貸してくれねえだろう。小田原へ行きゃ、ともかく、この部屋でなきゃア、書けるんだ。書きさえすりゃア部屋代ぐらい」
「だって、今払わなきゃ、どうなるの。夜逃げなの。荷物があるわよ」
「だからよ。マダムのところへ頼みに行ってきてくれ。事情を言や分ってくれるんだ」
「あなた行ってらっしゃい」
「オレはいけねえや」
「だって親友じゃないの」
庄吉が暗然腕をくんで黙りこんでしまうと、さすがに自分も失踪から戻ったばかり、宿六の古傷もいたわってやりたい気持で、
「じゃア、行ってくるわ。部屋代ぐらい文句言われたって構やしないわよ。