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ガドルフのゆり
風の又三郎
Read 風の又三郎 (ガドルフのゆり) by Miyazawa Kenji (宮沢 賢治) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,150 characters · 48 screens
淫らな光だ。)
その雲のどこからか、雷の一切れらしいものが、がたっと引きちぎったような音をたてました。
(街道のはずれが変に白くなる。あそこを人がやって来る。いややって来ない。あすこを犬がよこぎった。いやよこぎらない。畜生。)
ガドルフは、力いっぱい足を延ばしながら思いました。
そして間もなく、雨と黄昏とがいっしょに襲いかかったのです。
実にはげしい雷雨になりました。いなびかりは、まるでこんな憐れな旅のものなどを漂白してしまいそう、並木の青い葉がむしゃくしゃにむしられて、雨のつぶと一緒に堅いみちを叩き、枝までがガリガリ引き裂かれて降りかかりました。
(もうすっかり法則がこわれた。何もかもめちゃくちゃだ。これで、も一度きちんと空がみがかれて、星座がめぐることなどはまあ夢だ。夢でなけぁ霧だ。みずけむりさ。)
ガドルフはあらんかぎりすねを延ばしてあるきながら、並木のずうっと向うの方のぼんやり白い水明りを見ました。
(あすこはさっき曖昧な犬の居たとこだ。あすこが少ぅしおれのたよりになるだけだ。)
けれども間もなく全くの夜になりました。空のあっちでもこっちでも、雷が素敵に大きな咆哮をやり、電光のせわしいことはまるで夜の大空の意識の明滅のようでした。