Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
たかちほにおもう
高千穂に思う
豊島 与志雄
Read 高千穂に思う (たかちほにおもう) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,292 characters · 11 screens
急ぐこと約三キロ、鬱蒼たる林の前方が忽然と開けて明るく、その外光のなかに、数本の赤松が空高く亭立している。
それが標識だ。天然林はつきて、低い雑木交りの小松林となる。道は乾燥し、空気も薄くなり澄んでくる。高原の感じだ。この感じは、登るに従って次第に、高原から山の背のそれへと変ってゆく。
ここに、真に高燥な大気がある。高原だけではいけないのだ。代表的高原たる軽井沢や戦場ヶ原や仙石原などに、湿潤な重い大気が漂っているのは地勢の故であろうけれど、那須や北軽井沢や赤倉や富士見なども、その大気は低燥という感をまぬかれず、山の背に至って初めて高燥となる。
高燥な大気の中では、思念も軽く、足も軽い。眼前の中空に聳ゆる峯に引かれて、二キロ半ほど登ったかと思うと、ここにまた忽然と、意外な景色が展開する。
ゆるやかな斜面に開けてる砂原だ。小石交りのその広い砂原は、昔の氷河の跡かとも見え、雪崩の跡かとも見え、或は大河の跡の河原かとも見える。処々に小さな灌木の茂みが風にそよいでいるだけで、広い平らな砂原の肌はぬくぬくと日の光を吸っている。然しここは既に海抜千メートル以上の高地で、高千穂河原という。