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たかおざんげ
高尾ざんげ
豊島 与志雄
Read 高尾ざんげ (たかおざんげ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,252 characters · 21 screens
その上、未亡人梶恒子さんの噂も、時折持ち出されました。
或る寒い夜、永井さんはへんに真面目に言い出しました。――来年は梶さんの五周忌で、盛大な法事が行われる予定になっていること、その席へは未亡人の希望で菊千代にも出て貰いたいこと、どうやら未亡人は菊千代が好きになってるらしいこと……。
菊千代は細長い眼を見張りました。
「だって、あたし、まだ奥さんにはお目にかかったことがありませんのよ。」
「ところが、奥さんの方ではあるのさ。葬式の時に一度……それから、梶君が南方へ出発する前、踊りの会で、君が何か……踊ったことがある。あの時に奥さんも見に来ていたよ。それから、まだある筈だ。」
「あら、あの踊りの会に……。」
「そうだ、気がつかなかったろう。」
そして永井さんは声高く笑いました。
その笑い声に、菊千代はぞっと総毛立つ思いをしました。――あの舞踊の会に奥さんが来ていた筈はありませんでした。菊千代は公然と座席の方へ梶さんに挨拶に行き、暫く話しこんだことなど、いまだに覚えていました。梶さんとしても、あすこへ奥さんを連れてくるような人ではありませんでしたし、奥さんだってまさか、梶さんに内緒でやって来るような人ではなかったでしょう。