Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

げかしつ

高野聖

泉 鏡花

Read 高野聖 (げかしつ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,264 characters · 104 screens

Aozora Bunko

渠はしとやかに舞台よき所に進みて、一礼を施せば、待ち構えたりし見物は声々に喚きぬ。

「いよう、待ってました大明神様!」

「あでやかあでやか」

「ようよう金沢暴し!」

「ここな命取り!」

喝采の声のうちに渠は徐かに面を擡げて、情を含みて浅笑せり。口上は扇を挙げて一咳し、

「東西! お目通りに控えさせましたるは、当座の太夫元滝の白糸にござりまする。お目見え相済みますれば、さっそくながら本芸に取り掛からせまする。最初腕調べとして御覧に入れまするは、露に蝶の狂いを象りまして、(花野の曙)。ありゃ来た、よいよいよいさて」

さて太夫はなみなみ水を盛りたるコップを左手に把りて、右手には黄白二面の扇子を開き、やと声発けて交互に投げ上ぐれば、露を争う蝶一双、縦横上下に逐いつ、逐われつ、雫も滴さず翼も息めず、太夫の手にも住まらで、空に文織る練磨の手術、今じゃ今じゃと、木戸番は濁声高く喚わりつつ、外面の幕を引き揚げたるとき、演芸中の太夫はふと外の方に眼を遣りたりしに、何にか心を奪われけん、はたとコップを取り落とせり。

口上は狼狽して走り寄りぬ。見物はその為損じをどっと囃しぬ。太夫は受け住めたる扇を手にしたるまま、その瞳をなお外の方に凝らしつつ、つかつかと土間に下りたり。