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げかしつ
高野聖
泉 鏡花
Read 高野聖 (げかしつ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,264 characters · 104 screens
こう、腹あ立てめえよ、ほんにさ、このざまで腕車を曳くなあ、よくよくのことだと思いねえ。チョッ、べら棒め、サーベルがなけりゃ袋叩きにしてやろうものを、威張るのもいいかげんにしておけえ。へん、お堀端あこちとらのお成り筋だぞ、まかり間違やあ胴上げして鴨のあしらいにしてやらあ」
口を極めてすでに立ち去りたる巡査を罵り、満腔の熱気を吐きつつ、思わず腕を擦りしが、四谷組合と記したる煤け提灯の蝋燭を今継ぎ足して、力なげに梶棒を取り上ぐる老車夫の風采を見て、壮佼は打ち悄るるまでに哀れを催し、「そうして爺さん稼人はおめえばかりか、孫子はねえのかい」
優しく謂われて、老車夫は涙ぐみぬ。
「へい、ありがとう存じます、いやも幸いと孝行なせがれが一人おりまして、よう稼いでくれまして、おまえさん、こんな晩にゃ行火を抱いて寝ていられるもったいない身分でござりましたが、せがれはな、おまえさん、この秋兵隊に取られましたので、あとには嫁と孫が二人みんな快う世話をしてくれますが、なにぶん活計が立ちかねますので、蛙の子は蛙になる、親仁ももとはこの家業をいたしておりましたから、年紀は取ってもちっとは呼吸がわかりますので、せがれの腕車をこうやって曳きますが、何が、達者で、きれいで、安いという、三拍子も揃ったのが競争をいたしますのに、私のような腕車に