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げかしつ
高野聖
泉 鏡花
Read 高野聖 (げかしつ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 51,264 characters · 104 screens
と一言われ知らず、口よりもれて愕然たり。
八田巡査は一注の電気に感ぜしごとくなりき。
四
老人はとっさの間に演ぜられたる、このキッカケにも心着かでや、さらに気に懸くる様子もなく、
「なあ、お香、さぞおれがことを無慈悲なやつと怨んでいよう。吾ゃおまえに怨まれるのが本望だ。いくらでも怨んでくれ。どうせ、おれもこう因業じゃ、いい死に様もしやアしまいが、何、そりゃもとより覚悟の前だ」
真顔になりて謂う風情、酒の業とも思われざりき。女はようよう口を開き、
「伯父さん、あなたまあ往来で、何をおっしゃるのでございます。早く帰ろうじゃございませんか」
と老人の袂を曳き動かし急ぎ巡査を避けんとするは、聞くに堪えざる伯父の言を渠の耳に入れじとなるを、伯父は少しも頓着せで、平気に、むしろ聞こえよがしに、
「あれもさ、巡査だから、おれが承知しなかったと思われると、何か身分のいい官員か、金満でも択んでいて、月給八円におぞ毛をふるったようだが、そんな賤しい了簡じゃない。おまえのきらいな、いっしょになると生き血を吸われるような人間でな、たとえばかったい坊だとか、高利貸しだとか、再犯の盗人とでもいうような者だったら、おれは喜んで、くれてやるのだ。