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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
Read 高野聖 (こうやひじり) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,025 characters · 71 screens
(貴僧、さぞおかしかったでござんしょうね、)と自分でも思い出したように快く微笑みながら、
(しようがないのでございますよ。)
以前と変らず心安くなった、帯も早やしめたので、
(それでは家へ帰りましょう。)と米磨桶を小腋にして、草履を引かけてつと崖へ上った。
(お危うござんすから。)
(いえ、もうだいぶ勝手が分っております。)
ずッと心得た意じゃったが、さて上る時見ると思いの外上までは大層高い。
やがてまた例の木の丸太を渡るのじゃが、さっきもいった通り草のなかに横倒れになっている木地がこうちょうど鱗のようで、譬にもよくいうが松の木は蝮に似ているで。
殊に崖を、上の方へ、いい塩梅に蜿った様子が、とんだものに持って来いなり、およそこのくらいな胴中の長虫がと思うと、頭と尾を草に隠して、月あかりに歴然とそれ。
山路の時を思い出すと我ながら足が竦む。
婦人は深切に後を気遣うては気を付けてくれる。
(それをお渡りなさいます時、下を見てはなりません。ちょうどちゅうとでよッぽど谷が深いのでございますから、目が廻うと悪うござんす。)
(はい。)
愚図愚図してはいられぬから、我身を笑いつけて、まず乗った。