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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
Read 魔術師 (まじゅつし) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,264 characters · 280 screens
まるで火山の噴火孔、熔鉱炉の真唯中に落ちこんだのと同じこと。まばゆさに目をあいていることも出来ぬ。鼻をつく異臭にむせて、息も絶え絶えの焦熱地獄だ。
「ア、お父さん。……それは何です。……どうなすったのです」
咳き込みながら、二郎が非常な恐怖に撃たれて、あえぎあえぎ叫んだ。
一郎も、妙子も、苦悶の内に、夢見心地で父の恐ろしい姿を眺めた。
善太郎氏は、煉瓦の壁に凭れて、全身をねじ曲げ、両手は空を掴み、額には蚯蚓の様な静脈をふくらませて、今にも窒息しそうに悶えていたが、ゾッとしたことには、その格好が、源次郎の骸骨が示していた苦悶の有様と生写しなのだ。
骸骨はと見ると、洞穴を歩き出したまま、まるで善太郎氏の影の様に、寸分違わぬ姿勢で、すぐ隣の壁に凭れていた。
「キャーッ」という妙子の悲鳴、一郎と二郎も何か訳の分らぬことをわめきながら、父の奇妙な姿に飛びかかって行った。死霊のたたりを追っ払おうとしたのだ。
父子三人は折り重なって部屋の隅に倒れた。倒れると同時に、眼の前に、真黒な無数の玉が群がって来て、何が何だか分らなくなってしまった。
ふと気がつくと、フイルムの山は已に燃え尽して、立ちこめた煙もやや薄らいでいたが、椅子テーブルに移った火が、まだメラメラと燃えていた。