Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

Read 魔術師 (まじゅつし) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,264 characters · 280 screens

Aozora Bunko

と善太郎氏は思った。だが、その安心が、非常な間違いであったことが、間もなく分る時が来た。

数日は何事もなく過去った。だが、右の用心を施してから丁度一週間目の深夜、人々は、物悲しい横笛の音に、ふと夢を破られた。

アア、あの笛の音色! 曲の調子! どうして忘れることが出来よう。得二郎氏の殺された時にも、妙子や一郎が傷けられた時にも、これと全く同じ、物悲しげな笛の音が聞えたではないか。

まっ先に飛び起きたのは二郎であった。彼がその笛の音を一番よく聞き慣れていたからだ。

こんな時には、ドアに鍵をかけて置いたのが非常な邪魔になる。鍵を探して、もどかしくドアを開けて、廊下に飛び出して見ると、向うの端に寝ずの番の書生がボンヤリと立っている。

「誰か通りやしなかったか」尋ねて見ると、

「イイエ」

とけげん顔だ。まさか角力取りみたいな奴を見逃がす筈はない。マアよかったと思いながら、耳をすますと、いつしか笛の音はやんでいる。

「君、妙な笛の音を聞かなかった?」

「エエ、聞きました。僕も変だと思っているのです」

「どの辺から聞えて来た?」

「大旦那のお部屋です。確かに」

二郎はそれを聞くと、まさかとは思うものの、やっぱり気になるので、念の為に父の部屋を開けて見ることにした。