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まど

鷹野つぎ――人と文学

鷹野 つぎ

Read 鷹野つぎ――人と文学 (まど) by 鷹野 つぎ (たかのつぎ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,840 characters · 43 screens

Aozora Bunko

運転手風のひとが、夜具や行李や風呂敷包や、いろいろ運び入れているあとから、四十年配の男のひとに伴われて、健康人のような足どりではいって来た娘は、

「あら兄さん、ここはもとの同じベッドよ」と、驚いた声で話していた。

「なるほどそうだね、今度は癒りきるまで養生せよとベッドが云っているようだ」

若い父親と云ってもいい程な年長の兄は、看護婦のととのえるベッドの一方で、いろいろな持物を置場所におさめていた。

木製の箱型ベッドの、けんどん開きになってるところで、衣類の詰っている大型の行李の中へ、さらに風呂敷包みにした真冬のコートや肩掛、ジャケツ類まで合せ入れて、けんどんに納め、三四足の新らしい下駄や草履、積み重ねた手筥、洋傘のようなものまで、せまいなかへ無理に押し込もうとしていると、

「たいしたお荷物ですね」と、看護婦も云い添えた。

「季節のめぐりは早いですから、いちいち送るよりはと思いましてな」

温厚そうな愛情のこもった声で、その兄は説明した。

「私のありったけよ」

若い病人も笑ってみせた。

「なにそうでもないさ、良い帯や紋付なら退院の日まであずかって置いてある」

あずかって置いてある、という説明が、腑に落ちかねたらしく、看護婦は微笑だけのこして立ち去って行った。