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おうごんのうでわ

黄金の腕環

押川 春浪

Read 黄金の腕環 (おうごんのうでわ) by 押川 春浪 (おしかわしゅんろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,431 characters · 9 screens

Aozora Bunko

事や、深林に怪火の現われた事など、それから夫れへと巧に語るので、娘達は恐ければ恐い程面白く、だんだん夜の更けるのも知らずに居った。

すると此時忽ち室の扉がスーと明いて、入って来たのは此家の老家扶で、恭しく伯爵の前に頭を下げ、「殿様に申上げます唯今之れなる品物が、倫敦の玉村侯爵家より到着致して御座います」と、一個の綺麗な小箱を卓子の上に戴せて立去った。

玉村侯爵とは松浪伯爵の兄君で、三人の娘には伯父君に当って居る、余程面白い人で、時々いろいろ好奇な事をする。

伯爵は侯爵の送って来た箱を開けて見て、

「マア、非常に綺麗な腕環が入って居る」と、夜光珠や真珠の鏤めてある、一個の光輝燦爛たる黄金の腕環を取出した。

一番年長の娘は、直ぐに夫れを父伯爵の手から借りて見て、

「まあ何んと云う綺麗な腕環でしょう、之れは屹度伯父様から、妾に贈って下さったのですよ」と云えば、二番目の娘は横合から覗込んで、

「いいえ、伯父様と妾と大の仲好しですもの、妾に贈って下さったに相違はありません」と争う。

三番目の娘は其名を露子と云う、三人の中でも一番美しく、日頃から極く温順な少女なので、此時も決して争う