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おうごんをあびるおんな
黄金を浴びる女
野村 胡堂
Read 黄金を浴びる女 (おうごんをあびるおんな) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,350 characters · 22 screens
「そうかねえ」
妙にそぐわない心持、お駒は襟に顎を埋めて、考込んで了いました。
「相沢の旦那を悪く思っちゃいけないよ、お駒さん」
「悪くは思わないが、意気地の無い人だと思うよ」
「…………」
「そんな武士が何処にあるんだい」
「お駒さん」
「黙っておくれ、――自分の女を人に取られているのに、指を食えて引込んで居るような男を、私は大嫌さ」
「お駒さん」
「権次さん、黙って居ておくれ、腹でも立てなきゃア、私は後藤の小倅のところへ行く張り合が無い」
「…………」
「畜生ッ」
権次は慰めようもなく、黙って女の取乱した様子を見守るばかりです。
「お駒さん、無理もない事だが、相沢さんには罪が無い」
「黙ってお出よ、権の字、お前さんもお節介だねえ、隠密などになったり、色事へ口を利いたり、畜生っ、惚れてやるから」
「あッ」
権次は飛退こうとしました。お駒の見幕があまりに凄まじかったのです。
「権の字、私は口惜しい」
「お駒さん、気を確り持ってくれ」
「相沢さんは勘定奉行与力で、二百石取の大身だろう、夫婦約束をしたって、水茶屋の娘の私とは提灯に釣鐘、末遂げられるものとは思っちゃ居ない。――邪魔なら邪魔と、何うして御本人の口から言ってくれないんだえ」