Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのれんげつに
ある日の蓮月尼
岡本 かの子
Lesen Sie ある日の蓮月尼 (あるひのれんげつに) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.878 Zeichen · 25 Bildschirme
無名の青年 ――ありがとう御座います。まるで夢のようです。
(蓮月、屏風を立て廻し着物を脱ぎ換える。その間青年は居ずまいを直し襟を掻き合せたり髷の形を直したりする。蓮月出で来る。あでやかな娘姿。青年吃驚する。呆れて見惚れる。)
蓮月 ――これがわたくしにただ一枚残って居る娘時代の着物です。
無名の青年 ――娘だ! 娘だ!
蓮月 ――これを着たので、すっかり女らしい気持に還りました。
無名の青年 ――僕は嬉しくって堪まりません。もうこんな陰気な庵なんか捨てて、早く京の賑かな処へ行って二人で暮すことにしましょう。
(青年、蓮月の手を執る。)
蓮月 ――一寸待って下さい。たった一つ仕残した仕事がありますから。
(蓮月は半身を捻じ袂の中から何か取り出し口にくわえる。異様な音がする。蓮月、あっと云って俯伏す。)
無名の青年 ――どうしたのです! どこか悪くしたのですか。蓮月さん! 蓮月さん!
(青年、蓮月を抱き起し顔に手を添え振上げる。蓮月の口から血がしたたか垂れて居る。)
無名の青年 ――や!
(青年、蓮月の手に持てるものに気付きて捩ぎ取る。)
無名の青年 ――秤の分銅を噛んだのだ! 歯が折れている!