Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのれんげつに
ある日の蓮月尼
岡本 かの子
Lesen Sie ある日の蓮月尼 (あるひのれんげつに) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.878 Zeichen · 25 Bildschirme
夜が開けたらあなたは橋普請の働きに外へ出る約束でしたね。働く人がお腹を空にして居ては役に立ちません。少しなとおあがりなさい。おおそうそう、宵に母屋の律師さまから頂いた大根の葉の煮ものがここにある。これを菜にして兎も角箸に口をつけてご覧なさい。
(蓮月、経机の上の鉢から覆い紙を除け青年の膳へ持って行ってやる。)
無名の青年 ――有難う。ではまあ一生懸命喰べて見ましょう。
(青年、覚束なく喰べ出す。蓮月、香湯の鍋の胴に手を触れて見る。)
蓮月 ――丁度頃合いのあたたか味になった。毎夜子の刻迄には屹度して差上げる筈の日課が、ゆうべからの騒ぎで暁方になって仕舞った。仏様もお待ち兼ねであろう。どれお湯浴みして差上げましょう。
(蓮月、塗盥を庵室の中央に持ち出し、中に黄金の仏像を安置する。)
蓮月 ――「我今灌沐諸如来。浄智荘厳功徳聚。五濁衆生令離垢。同証如来浄法身。」
(蓮月、偈を繰り返し乍ら香湯を盥の仏にそそぐ。蓮月の偈が唱声三昧に入るに従い、青年、箸と椀をさし置きしきりに涙を拭き出す。遂にかすかな欷歔の声を立て両手をひしと組み合せ、蓮月の後姿を拝む。欷歔の声漸次大きくなる。