Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
Lesen Sie いのちの初夜 (いのちのしょや) von 北条 民雄 (ほうじょうたみお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.366 Zeichen · 63 Bildschirme
て来たのだった。非常に真剣な瞬間でありながら、油が水の中へはいったように、その真剣さと心が遊離してしまうのだった。そして東京に向かって電車が動き出すと、また絶望と自嘲が蘇えって来て、暗憺たる気持になったのであるが、もうすでに時は遅かった。どうしても死にきれない、この事実の前に彼は項垂れてしまうよりほかにないのだった。
一時も早く目的地に着いて自分を決定するほかに道はない。尾田はそう考えながら背の高い柊の垣根に沿って歩いて行った。正門まで出るにはこの垣をぐるりと一巡りしなければならなかった。彼はときどき立ち止まって、額を垣に押しつけて院内を覗いた。おそらくは患者たちの手で作られているのであろう、水々しい蔬菜類の青葉が眼の届かぬかなたまでも続いていた。患者の住んでいる家はどこに在るのかと注意して見たが、一軒も見当たらなかった。遠くまで続いたその菜園の果てに、森のように深い木立が見え、その木立の中に太い煙突が一本大空に向かって黒煙を吐き出していた。患者の生活もそのあたりにあるのであろう。煙突は一流の工場にでもあるような立派なもので、尾田は、病院にどうしてあんな巨きな煙突が必要なのか、怪しんだ。