Japanische Klassiker mit Furigana
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おさん
おさん
山本 周五郎
Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme
「明日は早立ちだぜ」
「支度はできてるのよ」女が云った。
参太は興ざめたような眼で女を見た、「――よっぽどあまい男にみえたんだな」
「たのもしいと思ったの」と女が云った、「お茶と菓子を持ってはいって来て、初めてあんたの顔を見たとたんに、たのもしい人だなって思ったのよ」
「どこかで聞いたようなせりふだぜ」
「しょっちゅうでしょ、女ならみんなそう思うだろうとおもうわ」女はそっと彼へ倚りかかった、「――よかった、これで安心したわ」
参太は湯呑を盆の上へ置いて横になった。女は掛け夜具のぐあいを直し、躯をすべらせて、参太に抱きつきながら喉で低く笑った。
そしていっときのち、――参太は女の顔を見まもっていた。女は眉をしかめ、力をこめて眼をつむっていた。力をこめているために、上瞼にも皺がよっていた。ひそめた眉と眉のあいだの皺は深く、刻まれたようなはっきりした線を描き、そこに汗が溜まっていた。半ばあいている口の両端は、耳のほうへ吊りあがり、そこにも急に力をこめたり、またゆるめたりするさまが認められた。いまだ、と参太は思った。
「おい」と彼は囁いた、「おまえなんていうんだ」