Japanische Klassiker mit Furigana
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おさん
おさん
山本 周五郎
Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme
「あとを云うな」参太はまた強く遮って云った、「初めから女房持ちだと断わってある、いっしょに旅をするのも江戸まで、江戸へはいったらすぐに別れるって、自分の口から云った筈だぜ」
「あたしは覚えのいいほうよ」
「ここは芝の露月町だ」
「この宿は飯田屋、よく覚えてるでしょ」とおふさは云った、「あんたこそ思いだしてよ、あたしいま、今日でお別れだって云ったじゃありませんか」
参太は黙った。
「ほんとのことを云うと、あたし男嫌いだったの」おふさはそっと参太の躯からはなれながら云った、「何人もの男と世帯を持ったような話をしたけれど、あれはみんな嘘、――十六のとし嫁にいって半年でとびだしたっきり、男はあんたが初めてだったのよ」
参太はなにも云わなかった。
「あたしが口で云うより、あんたのほうでそれを勘づくと思ったわ」とおふさは続けた、「あんたはずいぶん女を知っているんでしょ、だからあたしがどんな話をしても、あんたにはからだで嘘がみぬけると思ったのよ」
参太はちょっとまをおいて訊いた、「どうしてそんなことを云いだすんだ」
「ほんとのことを聞いてもらいたかったの、これっきり別れるんですもの、ほんとのあたしを知っておいてもらいたかったのよ」