Japanische Klassiker mit Furigana
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おさん
おさん
山本 周五郎
Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme
一升ちかい酒の酔で感情も脆くなったのだろう、作次の落ち窪んだ眼から、突然、涙が頬を伝ってこぼれおちた。彼は初めておさんと会ったときのことを話した。雪の降る日、九段坂の途中で、おさんが足駄の鼻緒を切って困っていた。作次は自分の手拭を裂いて鼻緒をすげてやり、それから淡路町の鳥屋で、いっしょにめしを喰べた。時間にすれば半刻くらいだが、鳥屋を出たときには、二人はもう互いにのぼせあがっていた。
「あたしをあんたのものにして、と初めての晩おさんは云った」作次は頬杖を突いていた手で、ぎゅっと顎を掴んだ。「身も心も、残らずあんたのものにして、決してあたしをはなさないでちょうだいって、こっちの骨がきしむほど、手足でしがみつきながら云った」
作次は眼をつむった。参太は黙っていた。作次は自分の回想に全身で浸ってい、そこに参太が聞いていることなどは、まったく意識にないようにみえた。まわりの客は絶えず変っていた。腰を据えて飲んでいるのは二た組か三組で、ほかの客はあっさり飲んですぐに引きあげる、「さあ、なかへとばそう」とか「そろそろ川を越そうか」などと云う声も聞えた。入れ替って来る客もたいてい同じようで、遊びにゆく下拵えに飲む、というふうであった。