Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
……」
「それはまァ、うれしゅうござんす」
「だが御安心は御無用じゃ。いつ何時変化があるか判らぬからのう」
「はい」
「お見舞の方々も、次の間にお引取りなすってはどうじゃの、御病人は、出来るだけ安静に、休ませてあげるとよいと思うでの」
「はいはい」と羽左衛門が大きくうなずいた。「如何にも御もっともでございます。――では、ここはおかみさんにお願い申して、次へ下っていることにいたしましょう」
「それがようござる。及ばずながら愚老が看護して居る以上、手落はいたさぬ考えじゃ」
「何分共にお願い申上げます」
一同は足音を忍ばせて、襖の開けたてにも気を配りながら、次の間へ出て行った。
暫し、鉄瓶のたぎる音のみが、部屋のしじまに明るく残された。
「御内儀」
玄庵の声は、低く重かった。
「はい」
「お気の毒でござるが、太夫はもはや、一時の命じゃ」
「えッ」
「いや静かに。――ただ今、脈に力が出たようじゃと申上げたが、実は他の方々の手前をかねたまでのこと。心臓も、微かに温みを保っているだけのことじゃ」
「それではもはや」
おむらの、今まで辛抱に辛抱を重ねていた眼からは、玉のような涙が、頬を伝って溢れ落ちた。