Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

「開けて見せねえ」

「拝みたけりゃ拝ませる。だが一つだって分けちゃァやらねえから、そのつもりでいてくんねえよ」

そういいながら、指先を器用に動かした春重は、糠袋の口を解くと、まるで金の粉でもあけるように、松五郎の掌へ、三つばかりを、勿体らしく盛り上げた。

「こいつァ重さん。――」

「爪だ」

「ちぇッ」

「おっとあぶねえ。棄てられて堪るものか。これだけ貯めるにゃ、まる一年かかってるんだ」

松五郎の掌へ、おのが掌をかぶせた春重は、あわてて相手の掌ぐるみ裏返して、ほっとしたように眼の前へ引き着けた。

「湯屋で拾い集めた爪じゃァねえよ。蚤や蚊なんざもとよりのこと、腹の底まで凍るような雪の晩だって、おいらァじっと縁の下へもぐり込んだまま辛抱して来た苦心の宝だ。――この明りじゃはっきり見分けがつくめえが、よく見ねえ。お大名のお姫様の爪だって、これ程の艶はあるめえからの」

三日月なりに切ってある、目にいれたいくらいの小さな爪を、母指と中指の先で摘んだまま、ほのかな月光に透した春重の面には、得意の色が明々浮んで、はては傍に松五郎のいることをさえも忘れた如く、独り頻りにうなずいていたが、ふと向う臑にたかった藪蚊のかゆさに、漸くおのれに還ったのであろう。