Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
目はしの利いたところが、まず何よりの身上なのであろう。若旦那のお供といえば、常に市どんと朋輩から指される慣わしは、時にかけ蕎麦の一杯くらいには有りつけるものの、市松に取っては、寧ろ見世に坐って、紙の小口をそろえている方が、どのくらい楽だか知れなかった。
が、そんな小僧の苦楽なんぞ、背中にとまった蝿程にも思わない徳太郎の、おせんと聞いた夢中の歩みは、合羽の下から覗いている生ッ白い脛に出た青筋にさえうかがわれて、道の良し悪しも、横ッ降りにふりかかる雨のしぶきも、今は他所の出来事でもあるように、まったく意中にないらしかった。
「ちょいと姐さん。いえさ、そこへ行くのは、おせんちゃんじゃないかい」
それと呼び止めた徳太郎の声は、どうやら勝手のわるさにふるえていた。
「え」
くるりと振り向いたおせんは、頭巾の中で、眼だけに愛嬌をもたせながら、ちらりと徳太郎の顔を偸み見たが、相手がしばしば見世へ寄ってくれる若旦那だと知ると、あらためて腰をかがめた。
「おやまァ若旦那、どちらへおいででござんす」
「つい、そこの不動様へ、参詣に行ったのさ。――そうしてお前さんは」
「お母さんの薬を買いに、浜町までまいりました。