Japanische Klassiker mit Furigana
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おばなさわ
おばな沢
山本 周五郎
Lesen Sie おばな沢 (おばなさわ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.479 Zeichen · 45 Bildschirme
英之助は、すぐ出張しなければならないので、盃の済んだあとゆるしを得て、節子の病間へゆき、そこでしばらく話をした。
「この部屋を見るのは初めてだな、ここで寝ていらっしゃるんですね」
彼はなつかしそうな眼で、幾たびも部屋の中を眺めまわした。そこは彬斎といった祖父が老後に使っていた部屋で、風とおしがいいのと日がよく当るのとで、医者がすすめて病間にしたものである。
障子の外は濡縁になっており、向うは卯木の生垣をまわして、広庭と仕切りができている。ちょうどその生垣の卯花がさかりで、まだ小さい若葉の緑とまっ白な花とが、雨に濡れてひときわ鮮やかに見えた。
「相良がいつかあなたに申し込んだことがあるそうですね」
話の合間に、彼はとつぜんこう問いかけた。
「御両親は承知なさろうとしたのに、あなたがいやでお断わりになった。そういうことを聞いたんですが、本当ですか」
「――さあ、そんなこともあったようですけれど」
節子は、とまどいをしたように眼を伏せた。
「――わたくしもう、よくおぼえておりませんですわ」
相良とのいきさつは、彼は知っている筈である。現にいちど彼はそういう意味のことを云ったことがあった。