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Japanische Klassiker mit Furigana

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おもかげしょう

おもかげ抄

山本 周五郎

Lesen Sie おもかげ抄 (おもかげしょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.947 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「さあ――」

孫次郎は静かに促した。

「戻るまでは旅の道連れ、戻ったうえは、――御承知でござるか、拙者には甘次郎という綽名がござる、女房に甘次郎……今度は家中の評判になりましょうぞ」

「まあ……存じませぬ」

唇許を笠で隠しながら見上げる眼、孫次郎はその眸子の中に、ありありと亡き妻の甦った姿を見出したのであった。

つつましく寄添って朝霧のなかを西へ旅立つ二人。少し離れた小高い丘の上に、沖田源左衛門が老友林主殿と並んで、その後姿を見送っていた。

「秘蔵の娘を、よく思い切ったの」

主殿が云うと、

「千人に一人の婿じゃ」

源左衛門は嬉しそうに頷き、頷き、

「あれだけの器量を持ちながら、亡き妻に誠を尽すほどの男、遖れものの役に立つべき人物となろう、――娘一人なにが惜しかろう、これで老後の楽しみが一つ殖えたわ」

源左衛門の唇に明るい会心の笑みが波をうった。富岳の頂きに赫々と朝日が燃えている。