Japanische Klassiker mit Furigana
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おりつとこらと
お律と子等と
Lesen Sie お律と子等と (おりつとこらと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.195 Zeichen · 51 Bildschirme
医者が雨の中を帰った後、慎太郎は父を店に残して、急ぎ足に茶の間へ引き返した。茶の間には今度は叔母の側に、洋一が巻煙草を啣えていた。
「眠いだろう?」
慎太郎はしゃがむように、長火鉢の縁へ膝を当てた。
「姉さんはもう寝ているぜ。お前も今の内に二階へ行って、早く一寝入りして来いよ。」
「うん、――昨夜夜っぴて煙草ばかり呑んでいたもんだから、すっかり舌が荒れてしまった。」
洋一は陰気な顔をして、まだ長い吸いさしをやけに火鉢へ抛りこんだ。
「でもお母さんが唸らなくなったから好いや。」
「ちっとは楽になったと見えるねえ。」
叔母は母の懐炉に入れる懐炉灰を焼きつけていた。
「四時までは苦しかったようですがね。」
そこへ松が台所から、銀杏返しのほつれた顔を出した。
「御隠居様。旦那様がちょいと御店へ、いらして下さいっておっしゃっています。」
「はい、はい、今行きます。」
叔母は懐炉を慎太郎へ渡した。
「じゃ慎ちゃん、お前お母さんを気をつけて上げておくれ。」
叔母がこう云って出て行くと、洋一も欠伸を噛み殺しながら、やっと重い腰を擡げた。
「僕も一寝入りして来るかな。」
慎太郎は一人になってから、懐炉を膝に載せたまま、じっと何かを考えようとした。