Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむし
かんかん虫
有島 武郎
Lesen Sie かんかん虫 (かんかんむし) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.483 Zeichen · 23 Bildschirme
其の日は三時半で一統に仕事をやめ、其処此処と残したところに手を入れて、偖て会社から検査員の来るのを待つ計りになった。私はかの二重底から数多の仲間と甲板に這い出して、油照りに横から照りつける午後の日を船橋の影によけながら、古ペンキや赤※(「金+肅」、第3水準1-93-39)でにちゃにちゃと油ぎって汚れた金槌を拭いにかかった。而して拭いながらいつかヤコフ・イリイッチが「法律ってものは人間に都合よく出来て居やがるんだ。シャンパンを飲み過ぎちゃなら無えとか、靴下を二十足の上持っちゃなら無えとかそんな法律は薬にし度くも無え。はきだめを覗いちゃなら無えとか、落ちたものを拾っちゃなら無えとか云うんなら、数え切れ無え程あるんだ。そんな片手落ちな成敗にへえへえと云って居られるかい。人間が法律を作れりゃあ、虫だって作れる筈だ」と云ったのを想い出して、虫の法律的制裁が今日こそ公然と行われるんだと思った。
丁度四時半頃でもあったろう、小蒸汽の汽笛が遠くで鳴るのを聞いた。間違なくセミオン会社所有の小蒸汽の汽笛だ。「来たな」と思うと胸は穏かでない。船階子の上り口には労働者が十四五人群がって船の着くのを見守って居た。