Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
Lesen Sie ぐうたら道中記 (ぐうたらどうちゅうき) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 164.113 Zeichen · 332 Bildschirme
第十二回
「惜しいことをしたね、折角のタスカンを!」
とお父さんが同情した。同時に半ば立ち上ったのは或は三輪さんが前後を忘却して飛び出すかも知れないと懸念したらしい。しかし御本人は、
「否、惜しいことはない。お蔭で寿命が又一年延びたようなものだ」
と答えて泰然たるものだった。
「相変らず妙なことを口走るね」
と団さんは退屈まぎれに冷かした。
「でも僕は毎年夏帽子を一つしか被らないからね」
「頭が二つあれば格別、一つしかない限り二つは被れないよ」
「否、一夏に一つという意味さ。君だって然うだろう?」
「それは然うさ。それなら初めから然う言えば宜い」
「理窟っぽい男だ。そこで夏帽子を買う度に僕は感慨無量なものがある」
「買って貰う度にだろう?」
「一々咎めるね。妻が買って来ても金は僕が出すんだから何方にしても同じことさ。毎年一つと定めて置くと、これから被る夏帽子の数とこれから生きる年の数と同じことになる」
「数の観念がない筈だが、案外あるね」
「大いにあるさ。昔から相場通り人生五十と仮定すると正当なら夏帽子は後九つしか被れないことまで勘定が出来ている。後九つとは考えて見ると心細いじゃないか? ところが、今年はこの旅行の為めに二度目を買い、それを今飛ばしてしまったから、又一つ買える。