Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらんぼ
さくらんぼ
岡本 かの子
Lesen Sie さくらんぼ von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.173 Zeichen · 5 Bildschirme
と呼ぶ言葉などなおさら嫌いだ。だが町長の息子はそういうことを嫌う、彼女が却って好きなのだ。間に立って彼女のおふくろは「好きなものと嫌いなものと混ぜ合せるがよい。好きな者と好きな者とじゃあんまり世の中が偏りすぎてしまうよ。第一あそこの家にはおとつあんの時代から随分世話になっているのだからね」そういっているうちにその町長の農学士と彼女の結納を取り交して仕舞った。
男は絵の具箱を担いでさかな屋の二階へ帰った。ませた娘の十六のが楽焼の皿にさくらんぼうを山盛り一ぱい持って来る。「どうせ喰られないんでしょうけれども。お師匠さんとこのをピアノの側で腹一ぱい喰べなすったんでしょうけれども」男はその通りと答える。
すると十六のがとんきょうな声をあげて「やだよ。都会の男は。なんて図々しいんだべ」とうとう田舎言葉を出す。彼はさくらんぼうを眺めながら自分がこの村へ初夏の景色を描きに来たことを想った。しかしそれは一枚も描かずに代りに彼女の弾くピアノの側で静物ばかりを描きさしてしまったことを想った男は、十六のにはそっぽうを向けて苦笑する。
彼女の庭の桜の枝はしなっていた。さくらんぼうは露にびっしょり濡れていた。