Japanische Klassiker mit Furigana
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さようなら
さようなら
田中 英光
Lesen Sie さようなら von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.251 Zeichen · 44 Bildschirme
ひとりは会社のタイピストだったが、彼女は誇りの高い有閑令嬢で、専門学校を出ている自分の学識をひけらかし、背の高い文学青年のぼくが好きで堪らぬ癖に、なんとかぼくのほうから求愛させようと、小鼻をヒリヒリさせ、種々そうした機会を作るのが、ぼくには小癪に障ってならず、彼女の誇りを傷つける快感の為にも、彼女を棄て、小学出の無知な下宿屋の娘だった平凡な女を妻に選んでしまった。ぼくの結婚後、この小柄なタイピストは自棄になったようで、二、三の大学生に肉体を許したのち、ふいと満州国の騎兵大尉とかに嫁ぐ為、会社を止め大陸に渡っていったが、ぼくは彼女のエゴチズムに満ちた小鼻を張り、眼を光らせた表情に男性本能としての嫌悪まで感じていたので、(男友達の場合はお互いの自我を意識してぶつけまいとするのでそんな嫌悪はないが)そうした彼女との「さようなら」には反って開放感が伴っていた。
もうひとりの女友達は酒場の女給で、今でも高名な画家の夫が同じく高名な女流画家と恋し合った為、棄てられた妻であり、脊椎カリエスの七つの弱い男の子を抱え、その酒場の二階に寝泊まりしている惨めさだったが、ぼくはそのひとを妻にした娘より遙かに好きだった。