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Japanische Klassiker mit Furigana

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さようなら

さようなら

田中 英光

Lesen Sie さようなら von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.251 Zeichen · 44 Bildschirme

Aozora Bunko

に従い、ぼくより健康で利発な三ツ上の姉なぞ、その模様を見物にでかけたりしていたが、ぼくは裏の広場に敷かれた戸板に腹這い、未だに現実の世界の鳴動するのを感じながらも、ひとりでまた博文館の長篇講談に読み耽っていた。弱虫のぼくは醜く、恐ろしい死者に対決する勇気がなく、講談本の英雄豪傑の世界に逃げこむことで、震災という現実の恐怖を忘れたかったのだ。それは現在「宮本武蔵」を愛読し、敗戦の苦痛やインフレの恐怖なぞ忘れようとしているある種の日本民衆の心理に共通したものがあるのかも知れぬ。

だが未だに大地の揺れる最中に、「岩見重太郎」の千人斬りなぞ読んでいた少年のぼくは、その時、現実とロマンスの世界のあまりの開きに、というより生理的に一大ショックを受けた直後だったからだろうか、眩暈をおこし、続いて酸っぱい胃液を口や鼻から一杯に嘔いた。二、三日して、父が故郷の土佐から孝行する積りで連れてきたばかりの、中風の老祖父が、震災の衝撃の為か自然に死んだし、彼の看護人として、故郷の村から連れてこられた十五歳のお栄ちゃんという娘まで、震災後流行したチフスに感染し、苦しみもがいて死んでいった。