Japanische Klassiker mit Furigana
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そのきどをとおって
その木戸を通って
山本 周五郎
Lesen Sie その木戸を通って (そのきどをとおって) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.448 Zeichen · 44 Bildschirme
四
左右を見るとか、振返るということもない。同じ足どりで、なにか眼に見えないものにでも導かれるように、まっすぐに歩いて行くのである。井倉川の橋を渡り、島田新田も過ぎ、あたりは黄昏れ始めた。
「おい、どうするつもりだ」正四郎は口の中で云った、「まだ芝居を続ける気か、それともなかまがそっちにいるのか」
朝からの強い雨で、往来の人も殆んどない。ときたま馬を曳いた農夫などと会うが、娘はそれも眼に入らぬというふうで、ますます昏くなる雨の道を歩き続けるのであった。正四郎は首をかしげた。おれが跟けていることを勘づいたのかな、いや、そうは思えない。それなら少なくともそぶりでわかる、とすると、なにもわからないと云うのが本当なのか。彼は高頬の、笠の紐の当っているところへ、指を入れて掻いた。
「まあ待て」と彼は自分に云った、「もう少しようすをみよう」
四
城下町から約一里半、まもなく本街道へ出ようとするところで、娘は道の脇にある観音堂へはいっていった。痩せた松が五六本と、石碑のようなものが三つ建っているだけで、堂守りもいないという小さなものであるが、それでも縁側へあがれば雨をよけることはできた。