Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいこん

だいこん

久生 十蘭

Lesen Sie だいこん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 153.732 Zeichen · 303 Bildschirme

Aozora Bunko

あたしは庭境いの夾竹桃を指さしながら艶のある声でいった。

「じゃ、あの蔭へでも行きましょうか」

「はあ」

といったきり神学生は動かない。あたしはじれったくなってたずねた。

「おねがいって、どんなおねがい。あたしのできることでしたら」

神学生が眼を伏せたままぶつぶついった。

「すみませんが、ピアノを」

「ピアノをどうなさるの」

「ピアノをすこし奏かせていただきたいんです。自分の家は目白で全焼しましたので、帰ってもなにもありません。ほんの五分だけ」

あたしはがっかりして気のぬけた声でいった。

「そんなことだったの。なにかもっと面白い話かと思ったのよ。おかまいできないけど、奏くだけなら、一年でも二年でもお好きなだけ奏いていいわ。じゃ、こっちへいらっしゃい」

「すみません」

神学生の兵隊さんは玄関で藁草履をぬぐと、篏木の床に大きな足跡をベタベタつけながらあたしのうしろからついてきた。高射砲弾の破片でぶちぬかれたあぶない階段をあがって、テラスに向いたあたしの部屋へ連れこむと、兵隊さんはものもいわずにピアノのほうへ行って、外被をあげてレグレティングのところをおさえてみて、それからひくい声でつぶやいた。