Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆずゆ
ゆず湯
岡本 綺堂
Lesen Sie ゆず湯 (ゆずゆ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.255 Zeichen · 27 Bildschirme
わたしは肩揚げが取れてから下町へ出ていて、山の手の実家へは七、八年帰らなかった。それが或る都合で再び帰って住むようになった時には、私ももう昔の子供ではなかった。十二月の或る晩に遅く湯に行った。今では代が変わっているが、湯屋はやはりおなじ湯屋であった。わたしは夜の湯は嫌いであるが、その日は某所の宴会へ行ったために帰宅が自然遅くなって、よんどころなく夜の十一時頃に湯に行くことになった。その晩も冬至の柚湯で、仕舞湯に近い濁った湯風呂の隅には、さんざん煮くたれた柚の白い実が腐った綿のように穢らしく浮いていた。わたしは気味悪そうにからだを縮めてはいっていた。もやもやした白い湯気が瓦斯のひかりを陰らせて、夜ふけの風呂のなかは薄暗かった。
――常から主の仇な気を、知っていながら女房に、なって見たいの慾が出て、神や仏を頼まずに、義理もへちまの皮羽織――
少し錆のある声で清元を唄っている人があった。音曲に就いては、まんざらのつんぼうでもない私は、その節廻しの巧いのに驚かされた。じっと耳をかたむけながら其の声のぬしを湯気のなかに透かしてみると、それはかの徳さんであった。