Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lesen Sie わが町 (わがまち) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.840 Zeichen · 186 Bildschirme
「――こらまたえらい罪な俥に乗ってしもたもんや。これから落語ききに行こちゅうのに、無茶苦茶やがな。一体どないした言うねん?」
「へえ。娘の婿めが、あんた、マニラでころっと逝きよりましてな」
「マニラ……? マニラてねっから聴いたことのない土地やが、何県やねん」
「阿呆なこと言いなはんな」
ポロポロ涙を落しながら、マニラは比律賓の首府だと説明すると、
「さよか、しかし、なんとまた遠いとこイ行ったもんやなあ」
「マラソンの選手でしたが……」
「ほんまかいな、しかし、可哀相に……。そいで、なにかいな。その娘はんちゅうのは子たちが……?」
あるのかと訊かれて、またぽろりと出た。
「まあ、おまっしゃろ」
「まあ、おまっしゃろや、あれへんぜ。男の子オか」
「それがあんた、未だ生れてみんことにゃ……」
新世界の寄席の前で客を降ろすと、他吉はそのまま引きかえさず、隣の寄席で働いている娘の初枝を呼びだした。
「お父つぁんなんぞ用か」
出て来た初枝は姙娠していると、一眼で判るからだつきだった。
他吉はあわてて眼をそらし、
「うん。ちょっと……」
と、言いかけたが、あと口ごもって、
「――ちょっと〆さんの落語でもきかせてもらおか思てな……」