Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 (ひきょうもの) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.876 Zeichen · 52 Bildschirme
縁板が蹠に吸いつくかと思われるように寒い晩になっていた。高い腰の上は透明なガラス張りになっている雨戸から空をすかして見ると、ちょっと指先に触れただけでガラス板が音をたてて壊れ落ちそうに冴え切っていた。
将来の仕事も生活もどうなってゆくかわからないような彼は、この冴えに冴えた秋の夜の底にひたりながら、言いようのない孤独に攻めつけられてしまった。
物音に驚いて眼をさました時には、父はもう隣の部屋で茶を啜っているらしかった。その朝も晴れ切った朝だった。彼が起き上がって縁に出ると、それを窺っていたように内儀さんが出て来て、忙しくぐるりの雨戸を開け放った。新鮮な朝の空気と共に、田園に特有な生き生きとした匂いが部屋じゅうにみなぎった。父は捨てどころに困じて口の中に啣んでいた梅干の種を勢いよくグーズベリーの繁みに放りなげた。
監督は矢部の出迎えに出かけて留守だったが、父の膝許には、もうたくさんの帳簿や書類が雑然と開きならべられてあった。
待つほどもなく矢部という人が事務所に着いた。彼ははじめてその人を見たのだった。想像していたのとはまるで違って、四十恰好の肥った眇眼の男だった。