Japanische Klassiker mit Furigana
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カストリこうじつろく
カストリ侯実録
久生 十蘭
Lesen Sie カストリ侯実録 (カストリこうじつろく) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.619 Zeichen · 31 Bildschirme
リシュモンのほうはごたごたと書類を持っていたが、ド・カストリのほうは出生証明書の写しを持っているだけであった。判事長がなにかほかに身分を証明するものはないかといったのにたいして、ド・カストリは、「フランスでは私の顔がよく知られています」と答えた。ド・リシュモンが身分の証明をするときは、かならず大きな身振りが入り、千言万句を流露させるのが常だったが、これはまた飽気ないほど慎ましい言いかたで、かえって強く心をうつなにものかがあった。
君が正当な権利を有するとするなら、王政復古の最初の年、すなわち一八一四年に請願すべきはずである。二十四年も経ってから請求権を行使するのはなぜかという訊問にたいして、ド・カストリは、
「私自身においては、即に過去の因縁となったものを取戻そうなどと一度も考えたことはなかった。しかしながら私は長らく貧苦の中に居り、齢もはや五十歳で、私の力では不幸の淵から這いあがることは覚束ないように思うから、伜を幸福にしてやる程度の遺留分、又は爵位維持のための限定世襲財産の中のほんの少々を」といった。
それくらいのことなら、訴訟に及ぶまでもなく、アングレーム公爵夫人と談合しては如何といったのにたいして、ド・カストリは、即に十年以来、度々救助を求めたが、ただの一度も返事さえ得ることが出来なかったもので