Japanische Klassiker mit Furigana
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カストリこうじつろく
カストリ侯実録
久生 十蘭
Lesen Sie カストリ侯実録 (カストリこうじつろく) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.619 Zeichen · 31 Bildschirme
と息も凍るような寒夜、頭から五ビドン(二斗あまり)の水を浴びせ、「さぞ寝心地がよかろうよ」と太子の尻を蹴り蹴り、薄氷の張りかけた水だらけの寝台へ追いあげた。太子はだまって涙を流すばかりであった。自分の泣き声がどこかの塔にいる姉のマリイ・テレーズが聞きつけ、もしや悲しませるかと、それを恐れたのである。(A・ボオシュネエ「ルイ十七世、生・苦悩・死」)
翌九十四年の一月、太子は影のように衰え、どう叩かれようが蹴られようが、動くことも声をあげることも出来なくなってしまった。ちょうどその頃、シモンの妻がタンプルの湿気に冒されてリュマチスムをひきおこし、居住に耐えなくなったので解職願いを出し、一月十九日、「暗牢」というむかし騎士団が監室に使っていた太い鉄格子の扉のある陽の目もささぬ暗黒の部屋へ、寝台もなしに太子を投げこんでタンプル付の下僚三名に引継がせ、形式通り受領書を書かせて引上げて行った。
太子はこの日から三人の雑役に生命を托すことになったが、悪意もなければ責任も感じない怠惰なやつらで、一日一回、鉄格子の間から麺麭と水を差し入れ、時たま思いついたように格子を叩いて太子の実在をたしかめるくらいが精々だったので、その後六カ月の間、衣服を変えることもなく、洗面もせず、大小便もそのまま、何百年とも知れぬ堆高いクラシック