Japanische Klassiker mit Furigana
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カナリヤとしょうじょ
カナリヤと少女
山川 方夫
Lesen Sie カナリヤと少女 (カナリヤとしょうじょ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.534 Zeichen · 5 Bildschirme
ちょうど、遠い沖からの目にみえぬ糸に手繰られてでもいるみたいに、するすると小鳥は波の上をすべった。海に浮いた。
我を忘れ、若者はそれを追った。大きく崩れては引く波、荒れ模様の秋の波に乗って、カナリヤは、誘うようにさらに沖に動いた。若者は、海に歩み入った。その上に、大きな波が崩れた。波は彼をつつみ、たたきつけて、万力のような力で、その身体を沖に引いた。
ふたたび、彼は姿を見せなかった。
捜索は空しかった。少女や、カナリヤのそれと同じように、若者の身体はきれいに海に呑まれていた。そして、海は凪ぎはじめた。
夜のせまりはじめた海を呆然と眺めたまま、捜索の男たちの一人が声をあげた。暗い充溢をたたえたその海面に、彼は、いつも必死にこちらをみつめていたあの少女の目の、よろこびにみちた無言のそのかがやきを見た気がしたのである。
と、こんどはすべての人びとの耳に、一瞬、砕ける波の轟音のあいだを縫い、あのカナリヤのたからかな囀りの音が聞こえた。……だが、それは風に鳴る帆綱の音に、人びとが、それを錯覚したのかもしれなかった。